2007/07/16

2007/07/16

[BOOK] 見続ける涯に火が… 批評集成1965-1977

一度目を読み終えたのは何ヶ月も前だったが、もう一度読み直そうと思っていたらこれだけかかってしまった。この日記にも感想を既に書いている(その1その2)が、再読して思うことは思想をいうものは極に走らざるをえないのかなということ。この本自体中平の著述を年代順に掲載しているためそのことがさらに感じられた。しかし、結局のところ1977年に中平が病に倒れた後に中平が主張するような’リアリティ’をともなった写真の時代が訪れなかったのはなぜだろうという思い(思考)のみが今僕の中を駆け巡っている。それは結局のところ、’地に足がついた’ものでなく単なる’思想’だったからだろうか。

1977年以後の今に至る中平は一見単なるファンキーなじじいに見えるが、助詞が省略された主語の使い方や時間にこだわりをみせるその独特な文章についてもそのうちこのような著作が出版されることを望みたい。

[BOOK] 太陽の黄金の林檎

レイ・ブラッドベリの短編集。僕自身はブラッドベリ自体に特に興味があるわけではなかったが、「決闘写真論」の中で中平がとりあげていた作品「日と影」に興味を持ったため読んでみた。

中南米あたりの町だろうか、ファッションカメラマンが若いモデルをつれて貧しい町の風景を背景に撮影しようとしている。そこに主人公のリカルドが現われ、この町の貧しい(がゆえにカメラマンにとってはフォトジェニックな)風景は撮影のためのスタジオや書割の役目をするために存在しているのではないと抗議し撮影の邪魔をする。そして結局はカメラマンに撮影を断念させることに成功するというただそれだけのとても短い話である。

おれたちみんなは、こうして食ったり喋ったりしよう。だれ一人として、写真
ではない、背景ではない、絵ではない、小道具ではない。役者なんだ、おれた
ちは。(P.311)

一方的に撮影者から「被写体」などと呼ばれるものは断じて「撮影」されるために存在しているのではない。そして普段豊かな我々が目にすることがない景色がいくら幻想に満ちていてもそのまやかしに乗せられることがあってはならない。

0 件のコメント: