[BOOK] 父のトランク
オルハン・パムクのノーベル文学賞受賞講演その他が収録されている。僕が読んだことのある彼の小説は「雪」のみだけど、すばらしい小説だった。近いうちにその他の彼の小説も読もうと思う。
書物とともに部屋に閉じこもり、まず自分の内部で旅に出た作家は、そこで何
年もの間に、よい文学に不可欠の規約をも発見することになります。文学とは、
自分の物語を他の人たちの物語のように、他の人たちの物語を自分の物語のよ
うに語ることができる才能なのです。そのことができるために、まず他の人た
ちの物語から、彼らの本から始めるのです。
(P.21-22)
いうまでもなく、小説は、わたしたちがよく知っていたり、気にかけていたり、
自分で経験したことのあったりするような状況に置かれた登場人物を想像する
ことで、人間というものへの理解を深めることができます。小説の中で、自分
たち自身を思わせる誰かに出会うと、まずわたしたちが願うのは、その登場人
物が、わたしたちとは誰であるかを語ってくれることです。
(P.82)
小説という芸術の歴史は、人間の解放の歴史です。つまり、自分を他者の立場
におき、想像力によって自分というものを変え、解き放つ歴史として書くこと
もできます。
(P.86)
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