[BOOK] 雪 KAR
オルハン・パムク(Orhan Pamk)による2002年の作品。ノーベル賞に最も近い作家というコピーが帯に躍る。9.11以降のイスラム過激派をめぐる世界を見事に予言したとも。著者によれば「最初で最後の政治小説」であると。
確かに現代トルコの政治 - 政教分離の国是と政治的イスラムの問題 - がこの小説の基底に流れていることはわかる。しかし、やはりこの部分はこの小説を構成するエッセンスの一つであって、より重要な本質は恋愛小説であることだと思う。
それとも、日本に住む私がトルコ(中東)が直面する政治的状況に身をおいていないから、その政治的側面に重きをおけないからだろうか? 例えそうだとしても、この小説はせつない(なんて陳腐な表現だろう!)恋愛小説として私を魅了した。だから私は純文学として優れた普遍性を持っているはずだと確信している。もちろん、単にほれたはれたの愛情物語では平凡な物語で終るところだが、そこにトルコの抱える問題(政治とイスラムという調味料)を加えることにより恋愛だけでは終わらない文学としての硬度がより一層増しているということは理解できる。
0 件のコメント:
コメントを投稿