2007/07/02

2007/07/02

[BOOK] 新解さんの謎

もうだいぶ昔に出た本だけれど、赤瀬川原平による三省堂の新明解国語辞典の面白さについて書かれた本(それと後半は紙についての随筆)。いっときブームになったらしいけれど、新明解国語辞典の内容がこんなにも面白いなんて知らなかった(本当に面白い!!)。

普通、辞書は”引く”もので”読ん”だりはしないだろうけれど、この辞書だけは”読み”たくなった。今、辞書はどんどん電子化されたものが主流になってきていて”引く”ことに関してはとても便利になったけれど、これら電子辞書は”読み”にくいだろうな。紙の辞書を残すならばこのような辞書の編纂が有効か。

[MOVIE] 「隠された記憶」(DVD)

ハネケの監督作品は初めて観た。もちろんおよそハリウッド的なエンターテイメント映画ではない、飽くことなく辛抱強く最期まで観るには何か飲み物をちびりちびりやりながらがよいだろう。

原罪ともいうべき無邪気な幼時の罪が如何に現在へ影響を与えうるか。しかし、答えは作中にはない(たぶん)。それどころか作中の’起’となる謎ですら解かれることはない。エンディングも一度観ただけでは、頭の中が?マークで一杯になり、このチャプターだけを何度も観かえしてしまった。それでも何が起きているかは判明したけれど、何をしているかは謎のままだ。

この映画は、監督が作中で答えを提示することを放棄してしまったこれらの謎を、映画を観た者がどのように考えるか・感じるかを楽しめるかどうかで評価がきまるのだろう。オルハン・パムクは「文学とは、自分の物語を他の人たちの物語のように、他の人たちの物語を自分の物語のように語ることができる才能でなのです。」と語っているが、いくら謎を残していてもその基底にある映画の主人公の物語を自分の物語のように共感できなかった僕にとっては、文学たりえなかった。

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