2007/06/18

2007/06/18

[PHOTO] 美術館の政治学

タイトルに”政治学”とあるが、政治学と名付けられるほど美術館に関する”政治学”が語られているわけではない。しかし、タイトルのイメージとは異なるが内容はとても興味深かった。

まず、日本のミュージアムは万国博覧会を起源としていることを解き明かしている。次に’私’のミュージアムとして柳宗悦の日本民藝館をとりあげそのNPO的性格を説いている。

上野公園に広がるミュージアムパークの章では、その歴史を彰義隊の墓所やや西郷像などに代表されるような今も残る濃厚な敗者の影と、ある意味芸術作品の墓所ともいえる美術館を重ね合わせている。

その他にも靖国神社の遊就館における美術館としての可能性、日本の美術展史の中で百貨店の果した役割の大きさを評価している。さらに地方の美術館の成功例としてYCAM、金沢21世紀美術館、青森県立美術館をとりあげその成功の原因を探り、またバブル崩壊以後の財政逼迫の中で傾いた美術館をどのように立て直していくかの方策も探っている。

日本の美術館の概史と現在の事情を知るのにはとても良い本。

0 件のコメント: