2007/06/04

2007/06/04

[BOOK] ローマ建国伝説

有名なローマ建国物語であるロムスとレムスに関わる分析をこれでもかというくらいに述べた本。軽いローマ建国史の本だと思って手に取ると痛い目に遭います(遭いました)。

ロムスとレムスに関する伝説の考証に興味のあるロムス/レムスおたくの人には良いと思うが、何度も言うように軽くさらっと読む本ではない。

しかし、このロムスとレムスの話を読んでいて、我が日本の仁賢(わけ)と顕宗(おけ)の兄弟天皇の事が思い浮かんでしまった。

[BOOK] 千々にくだけて

リービ英雄による、9・11を題材とした小説。小説ではあるがその内容は限りなく彼の体験に基いていると思われる。アメリカ人でありながら、日本の純文学の担い手として日本語で小説を書き、30年も使い続けている日本語による思考と英語での思考を行き来することで、著者によってものごとが相対化されていくような感じを受けた。母国アメリカ合衆国で起きたあのテロに関して中世1が舞い戻ったかような反応を示した一部の米国人とはある意味異なった眼2とでも言うのだろうか。

著者は「The United States has been a victim.」、「Things changed.」と小説の中の登場人物に語らせている。確かに今あの日以降を振り返ると、冷戦というある種恐怖の三文芝居が終演した後の、(先進国の)人びとの浮かれてきっていた日々は終わりを告げ、antiterrrorを叫ぶ政治指導者の声によって”A lot of people has been avictim”となり、9・11以上の血がアフガニスタン、イラクその他の地でテロ撲滅の名の下に流れる。三文芝居以下とも言える新たな幕が開けたのだと。

日曜日に購入して一気に読んでしまった。「最期の国境への旅」も素晴らしかったがこの小説も非常に私の中にすっと入っていくものがあった。もしかしたら私にとって開高健以来の純文学小説家に出会ったかもしれない。とりあえず、amazonで購入可能なリービ英雄の新品本を全部注文してしまった。


  1. もちろん米国史に中世なんてないのだけれど。↩︎

  2. というよりもむしろ異邦人と言いきってしまった方が良いかもしれない。↩︎

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