2007/03/05

2007/03/05

[BOOK] タキトゥス 年代記 (上)

[BOOK] タキトゥス 年代記 (下)

タキトゥス(Cornelius Tacitus)の年代記(ANNALES)である。長い年月の間に欠落してしまった部分にはティベリウス末期のセイヤヌスの没落部分やネロの最期などがあり、このあたりの重要な部分をタキトゥスがどのように描いていたのかを現代の我々が読むことはできないのはとても残念だ。

浅学な私には知識がないが彼は本質的には共和主義者だったのだろうか。年代記にはそこに描かれたティベリウスからネロまでの皇帝たちへの軽蔑1に満ちている。年代記に書かれているティベリウスの言葉にはそれなりに重みを感じるものが私にはあったけれど、タキトゥスのような元老院議員にはティベリウスの元老院軽視2や元首政体によって自由な政体が失なわれたことに影響する上流階級の堕落(と主張している)もあって彼を好まなかったのだろうか(ウェスパシアヌスの時代になって彼の影響もあり上流階級の放縦な生活は改められたとも書かれている)。

また、ティベリウス時代の(上流階級に属する者達の間の)告発の多さにも驚かされる。告発の結果、被告が有罪となれば告発者は被告の財産を得ることができるというから金持ちほど枕を高くして眠れない。

印象的だった文言を。

他人の恩義は、そのお返しが出来ると思っているうちは、嬉しいが、とうてい
その力もないとなると、感謝より増悪で報いたくなるものである。(18章)

  1. そして皇帝たちへの阿諛、追従しか考えのない元老院の貴族たちへ軽蔑も。↩︎

  2. 晩年はローマから離れてカプリ島へ移住し、元老院へは書簡を送るだけで元老院へ決して出席しなかった。↩︎

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