2024/09/29

2024/09/28

後藤繁雄「現代写真とは何だろう」


たまたま書店で面白そうな本はないかと物色していたところ、この本に出会い購入。私自身は、コンテキストとかステートメントの予備知識や理解がどうしても必要だったりするのでいわゆる現代アートは苦手の部類。ここでいう現代写真もファインアートの流れに組み込む・組み込まれた写真のことかと思って読み進めたが、ウィリアム・エグレストン、スティーブン・ショア、中平卓馬・森山大道(PROVOKE)などが現代写真の創世記・プロローグとして語られる。そして80年代、90年代の写真家・・・と語られ、最後はAR/VRで終わる。写真の掲載はほとんどないため、取り上げられた写真家(作家)がどのような作品を作っているのかは筆者の語り口のみからしか想像できない。もちろんGoogleなどで検索すれば一部を知ることができるが、特に後半に紹介される写真家(作家)の名前は私としては初見の人ばかり出会ったため、今度じっくり調べて興味が湧く写真を見つけたら写真集を見てみよう。ちなみにサム・フォールズは雑誌IMA Vol. 41を見て知っていた。


筆者が巻末に「来るべき写真のためのブックリスト」と称して、大きく変容しつつある写真を考えるためのリストを提供している(本書の帯のコピーが「写真をre-thinkする」である)。調べてみると既に絶版なのか品切れとなっていて入手が古書でのみとなっているものも多い(そして現代写真を論ずるにあたって重要な本なのであろうから、出版時の価格よりかなり高くなっているものばかりだ)。


来るべき写真のためのブックリスト:(本書巻末のリストに掲載されている書籍の出版元サイトのページをリンク(一部のぞく))



2024/09/16

新藤健一「新版写真のワナ」

 


1994年の書籍である。2B Channelで取り上げられていて、そう言えば昔読もうと思っていてそのままだった事を思い出し中古で購入した。デジタルカメラが普及する前、写真が真実を写すという神話がまだ色濃く残っている最後の頃の著作である。この中で、沖縄の松永優裁判も取り上げられていて、その中に唐突に中平卓馬の言が出てきた。

写真の中平卓馬が「水平線にある太陽を、これは朝日か夕日かと問われても答えられない」と語っているように、時間的、空間的要素を抜きにして写真を語ることはできないのである。

先日、柳本尚規「プロヴォーク: 中平卓馬をめぐる50年目の日記」を読んだばかりの私は思わず手元に置いていた中平卓馬も著作集「見続ける涯に火が… 批評集成1965-1977」を手に取り、松永優裁判を取り上げた「客観性という悪しき幻想ー松永優事件を考える」を読み直してしまった。ただし、この中には、「水平線に〜」の部分は記載がなかった。今手元にないのでわからないが、おそらく他の著作だろうと思う(このような文章があったような記憶はある)。

2024/09/15

東京国立近代美術館「所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.9.3–12.22)」

 


MOMATの所蔵品展にいく。西洋美術館もそうだけれど、MOMATも素晴らしい所蔵品が多くあって、企画展だけでなく、収蔵品展も行くべきだと思う(ちょくちょく展示作品も変わるし)。

柳本尚規「プロヴォーク: 中平卓馬をめぐる50年目の日記」

 

特に買う本も無く池袋のジュンク堂を訪れ、棚から棚へ何か面白そうな本はないかと物色していたらこの本を見つけた。この本を読むまでは、私は著者の柳本さんを知らなかった。中平卓馬が編集者から写真家になり活躍していく60年代後半の中平卓馬やその周辺の事柄について、助手?のように近くにいることが多かった著者が、記憶を呼び起こして日記風?にまとめたもののよう。

近年の葉山の神奈川県立美術館や東京国立近代美術館の展覧会、ギャラリーでの展示など、2015年に亡くなった中平のブーム?がまた来ているのか。

写真を撮り始めて、写真について色々と考え出し文字情報を漁りだすと、必然的に中平卓馬の写真についての言説に出会う。中平の書籍などでの言説のみが純化され中平のイメージとなっていく。そこである種の人たちは感化され、一種の中平教の信徒になる。そうなると、亡くなった人のことでもあるし、どんどんカリスマ化されていく。(本当は文章で写真を理解した気になるのではなく、写真から考え、自分なりの理解を導き出すべき何だとは思う。)

そんな中で、50年後に思い出して書かれたものとはいえ、中平の近くにいた人が普通の中平を記録して置くのはとても大切だと思う。中平の言説だってその中から産まれてきたわけだろうし。

柳本さんの「日記」は1971年に中平がパリビエンナーレに行くところで終わる。この辺りまでが、柳本さんと中平が濃密に付き合いのあった時期だったのかしら。

エピローグで、1977年に中平が倒れた直後のことなども少し触れられている。

2024/09/14

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展

 

東京ステーションギャラリーで開催中の「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展へ行く。浮世絵のようなグラデーション、水彩画、シルクスクリーン、彫刻、矢印いっぱい、ミサイルの歯、Little hatted man。 

2024/09/08

映画「夏への扉 キミのいる未来へ」

 


昨日のハインラインの「夏の扉」を読んだ勢いで、本作を鑑賞。舞台を1995年と2025年の日本に移している。尺の関係で仕方がないと思うけれど、主人公のダニエル(宗一郎)と飼い猫ピートの関係、ピートとベル(鈴)やベルのいやらしさ、サットン夫妻との出会い等、リッキー(莉子)が冷凍睡眠に至る経緯などが省略されているので、物語が少し浅く感じたかもしれない。あと、時系列?的には結構複雑なお話で、小説を読んだ者であれば、次の展開は想像できてしまうが、未読の人は理解できたのだろうか。

2024/09/07

ロバート・A・ハインライン「夏への扉」(The Door Into Summer)

 


1957年に出版された有名なハインラインの小説だけれど、まだ読んでいなかったので夏休みに読もうと購入。違う方の訳の版もあるようだけれど、オリジナルの福嶋正実訳を選んだ。ただし、新版とあるように現代にあわせて訳語などがアップデートはされているらしい。タイムトラベル、ロボットとSF要素は多くあれど、この話の中核は純愛だなと思う。

しかし、1957当時にハインラインが想像した2000年と僕らが現実に経験した2000年は大分違ったな。